削りたくて削る歯医者はいない

  −−これから毎月、歯にまつわるいろいろな話を、先生にうかがって参ります。
「そう堅くならないでいいですよ。あ、歯は堅くなければ困るんだけど、ハハハ…」

  −−……
「ジョークは苦手?」

  −−いえ、そんなことはないです。
 インタビューの趣旨としては、このページをご覧になった皆さんが、歯に関するちょっとした豆知識、あるいは歯医者さん選びの参考にしてもらえるような情報を身につけることができるように、ということなんです。
「あなた、歯医者に行くとき、うれしい?」

  −−いえ、あんまり…。
「そうでしょう。何がイヤ?」

  −−やっぱり、あの、ドリルですね。ウィ〜ンって、音を聞くだけで鳥肌が立ちます。
「イヤだよねー、あれ、こっちも本当はすごくイヤなんですよ」

  −−そうなんですか。もしかしたら、歯医者さんって、あれがやりたいためになる人が多いんじゃないかって思ってました。
「中にはそんな人がいるかもしれないけど、でもね、大多数の歯医者さんは仕方なくやってるんですよ。誰だって、できれば、人の歯なんか削りたくないんです。どうしようもなくて削るにしても、本当なら最小限の面積に留めておきたいんです」

  −−本当なら、っていうことは、削らなくてもいい部分まで削ることがある、と?
「ご明察。現在の歯科医療では、虫歯だけじゃなくて、その周辺の健康なエナメル質までまとめて、ウィ〜ンと削っちゃうことが多いんです」

  −−なぜそんなことをするんですか?
「これはね、健康保険では新しいやり方(材料)が使えないので止むを得ないんです。」

  −−健康保険!?

健康保険では削らない方法が余り認められていないんですよ


「そう、健康保険。保険では、虫歯をどんな風に削らなくちゃいけないか、ということが決まっていて、その範囲から外れると、患者さんのためにと考えても保険が適用されなくなっちゃう。ヘンな話なんですが、私が悪徳歯医者なら、削りまくればいいわけです」

  −−怖い話ですね。
「そう。だけど私は、根が小心者なので、そういう治療はできないんです。それにね、もっと大切なのは…」

  −−はい。
「歯の表面のエナメル質は、実は人間にとってかけがえのないものなんです。1ミリであろうとも削ってしまえば、もう自然に再生することはないんです」

  −−そんなに貴重なものなんですか!?
「そうなんです。そういう大切なものを、見境なく削るっていうのは、歯医者としての良心が痛みます」

  −−必要のない部分まで削られないためには、どうすればいいんでしょう。
「私は『自費治療』という選択肢もありますよ、とお話しています」


歯にやさしい自費治療

  −−自費治療というと、お金持ちの金歯みたいな、そういうイメージがありますが…。
「そういうのとは、ちょっと違うんですよ。健康保険の範囲でやろうと思うと、治療の範囲が制限されますが、自費だと、必要な部分だけ削ることができます」

  −−健康なエナメル質まで削られてしまうことはない、ということですね。
「そうです。ピンポイントで悪い部分だけを削るのは、保険治療では難しいんです。もちろん、ある程度の技術、そして精密な医療機器が必要になってきますから、そうした部分も治療費に跳ね返ってくることも事実です」

  −−考えちゃいますね。
「でもね、自分の歯、口、そして体ぜんたいのことを考えたら、自費という選択肢を真剣に考えてみてもいいんじゃないでしょうか」

  −−なぜですか?
「だって、人間、一日三度の食事を、思い切り楽しめることが一番の幸せなんですから。そのためには少々、お金をかけるという選択肢もありますよ、ということです」

  −−そうですね。
「それに、保険治療なら、ごく短時間で済ませるところも、自費ならじっくり時間をかけて、納得のいくまで説明をさせて頂いて、方針を立てて治療していくこともできます。私はこれが、一番うれしいところなんです」

  −−じゃ、保険診療はダメなんでしょうか?
「いえ、保険には保険のメリットもありますから、悪者にしようというつもりはありません。ただ、さっきあなたがおっしゃったように、自費、イコール、金持ちのゼイタク治療だと思われてしまうのが残念なんです」

  −−このあたりで時間が来てしまいました。また来月、お話をうかがいます。ありがとうございました。
「ありがとうございました」